【徹底比較】アバルト695と595の違いとは?“特殊部隊”と“正規軍”、その血統と価値の全て

中古車情報サイトを眺めていると、アバルトのラインナップの中に、ある種の“謎”が潜んでいることに気づきます。 「アバルト 595 コンペティツィオーネ」、そして、その隣には、よく似たスタイルの「アバルト 695 トリブート・フェラーリ」。あるいは、「アバルト 695 コンペティツィオーネ」。
見た目は似ているのに、価格は時に、何百万円も違う。一体、この「595」と「695」という数字の間には、どれほどの違いがあるというのでしょうか?
- 「695は、単純に595より速くて、偉いモデルなの?」
- 「“限定車”だけが、695を名乗れる特別な存在?」
- 「走りの“味”や、将来の資産価値まで考えた時、賢い選択はどちらなのだろう?」
この記事は、そんなアバルトのラインナップにおける、最も深く、そして最も魅力的な謎、「595」と「695」の関係性を解き明かすための究極の比較検証レポートです。
私たちは、この2つの数字を、単なるスペックの違いではなく、アバルトというブランドの“軍隊”になぞらえて解説します。 「595」は、ブランドの中核をなす、勇猛果敢な“正規軍”。 「695」は、特別な任務のために召集される、少数精鋭の“特殊部隊”。
この記事を最後まで読めば、あなたは、それぞれの部隊が持つ、歴史、装備、そして誇りを深く理解し、あなた自身が、どちらの部隊に所属したいのか、その明確な答えを見つけ出すことができるはずです。
目次
1.【歴史の証言】なぜ「695」は特別な数字なのか?その血統の起源
現代の595と695の関係性を理解するためには、まず、その時計の針を、1960年代まで巻き戻す必要があります。
全ての始まりは、偉大なる小さな大衆車「フィアット500(チンクエチェント)」

天才エンジニア、カルロ・アバルトは、当時イタリアの国民車であった、非力なフィアット500に、レースで勝つための魔法をかけ始めます。排気量を595ccへと拡大し、パワーアップさせたのが、ご存知「フィアット・アバルト 595」。これが、現代へと続く、栄光の歴史の第一歩です。
そして、最強の称号「695 SS」が生まれる

しかし、カルロ・アバルトの野心は、それだけでは終わりませんでした。彼は、595をさらに究極の形へと進化させます。排気量を、当時のレギュレーション上限である695ccまで拡大し、さらなるチューニングを施した、コンペティションモデル。それが、「フィアット・アバルト 695 SS(エッセエッセ)」です。
この小さな巨人は、ツーリングカーレースにおいて、格上の大型マシンを次々と打ち負かすという、伝説的な快挙を成し遂げました。 この瞬間から、アバルトの歴史において、「695」という数字は、単なる排気量を表すものではなく、「その時代の、最も過激で、最も特別な、レース直系のモデル」にのみ与えられる、栄光の称号となったのです。この歴史的背景こそ、現代の595と695の序列を理解する上で、最も重要な知識です。
2.【正規軍】アバルトの“今”を支える、595シリーズという名の主力部隊
現代において、「595」は、アバルトブランドの中核をなす、量産・カタログモデルに与えられる名前です。いわば、ブランドの“顔”として、最前線で戦う「正規軍」と言えるでしょう。この部隊の中にも、明確な階級(グレード)が存在します。(※年式により、名称やスペックは変動します)
【兵卒】ベースグレード(595)

最高出力145ps。アバルトの世界への、最も身近な入り口です。しかし、「兵卒」と侮ってはいけません。その心臓には、紛れもないサソリの毒が注入されており、ひとたびアクセルを踏み込めば、一般的なコンパクトカーとは比較にならない、刺激的な加速を味わうことができます。
【士官】ツーリズモ(595 Turismo)

最高出力は165psへ。その名の通り、長距離を快適に、そして速く駆け抜ける「GT(グランツーリスモ)」的なキャラクターが与えられた、上級士官です。上質なレザーシートや、充実した快適装備が特徴で、日常的な使いやすさと、アバルトらしい刺激を、高い次元で両立させています。
【司令官】コンペティツィオーネ(595 Competizione)

最高出力は、最強の180psへ。「コンペティツィオーネ」とは、イタリア語で「競争・競技」を意味します。その名の通り、正規軍の中で、最もサーキット志向で、最も戦闘力の高い、現場の司令官です。ホールド性の高いSabelt社製セミバケットシート、強力なブレンボ製ブレーキ、そして、魂を揺さぶるサウンドを奏でる、レコードモンツァ・エキゾーストシステムを標準装備。中古車市場でも、圧倒的な人気を誇る、最強のグレードです。
【通信兵】F595

最高出力は165ps。フォーミュラ4へのエンジン供給を記念して作られた、少し特殊な兵士。最大の特徴は、上下2段に重ねられた、4本出しのレコードモンツァ・ソブラポスト・エキゾースト。そのサウンドは、他のどのモデルよりも官能的で、自らの存在を雄弁に主張します。
3.【特殊部隊】伝説を創造する、695シリーズという名の少数精鋭
一方、「695」は、歴史的な背景に基づき、現代においても、特別なモデルにのみ与えられる、栄光の称号です。それは、特別な任務(コンセプト)のために召集され、特別な装備(専用パーツ)を身にまとい、そして、常に伝説的な戦果(高い資産価値)を残す、少数精鋭の「特殊部隊」なのです。
これまで、歴史に名を刻んできた、伝説的な特殊部隊員たちを見てみましょう。
695 トリブート・フェラーリ(2009年)

フェラーリとの共同開発。その名の通り、「フェラーリに捧げる」一台。専用チューンの180psエンジン、フェラーリF430を彷彿とさせるホイール、そして特別なボディカラー。その全てが、別格の存在感を放ちます。新車価格は約600万円でしたが、現在の中古市場では、1000万円近いプレミア価格で取引される、伝説の始まりです。
695 ビポスト(2014年)

イタリア語で「2座席」を意味する、公道を走れるレーシングカー。リアシートを撤去し、チタン製ロールバーを装着。オプションで、アクリル製のスライド式サイドウィンドウや、クラッチ操作なしでシフトアップ可能な「ドグリング・トランスミッション」まで選択可能でした。そのストイックさは、歴代最強。まさに、特殊部隊の中の、さらに特殊な「コマンドー」です。
695 70° アニヴェルサーリオ(2019年)

アバルト創立70周年を記念したモデル。最大の特徴は、手動で12段階に角度調整が可能な、大型のリアスポイラー「スポイラー・アセット・ヴァリアビーレ」。往年のラリーカーを彷彿とさせる、遊び心と、本気の空力性能を両立させた、記念碑的な一台です。
【近年の変化】 近年、アバルトは、595シリーズの最上位モデルであった「コンペティツィオーネ」と「ツーリズモ」を、「695」シリーズへと名称変更しました。これは、標準モデルの性能が、かつての限定車レベルにまで到達したことの証であり、部隊編成の変更、つまり「司令官クラスは、これより全て特殊部隊扱いとする」という、名誉ある“昇格”と言えるでしょう。
4.【直接対決】595コンペティツィオーネ vs 695シリーズ ― その“装備”の決定的な違い
では、正規軍の司令官「595 コンペティツィオーネ」と、特殊部隊である「695」とでは、具体的に何が違うのでしょうか。重要なのは、馬力(スペック)だけが、その価値を決めるのではない、ということです。
確かに、どちらも最高出力は同じ180psです。しかし、その“装備”の質と、希少性が全く異なります。
項目 | 595 コンペティツィオーネ(正規軍 司令官) | 695シリーズ(特殊部隊) |
---|---|---|
エンジン | 1.4Lターボ 180ps(標準装備) | 1.4Lターボ 180ps(基本は同じだが、限定車専用チューンの場合も) |
エグゾースト | レコードモンツァ(標準装備) | アクラポビッチ製など、より高価で、高性能な専用品が奢られることが多い。 |
サスペンション | KONI製 FSDショックアブソーバー(標準装備) | 機械式LSDや、さらにハードな専用セッティングが施される場合がある。 |
内外装 | Sabelt製シート、アルカンターラステアリングなど | カーボンファイバー製パーツの多用、限定車専用のボディカラー、シリアルナンバープレートなど、その希少性とコストが全く異なる。 |
結論として、その差は、絶対的な速さというよりも、「どれだけ、特別で、希少で、コストのかかった装備を身に着けているか」という、コレクターズアイテムとしての“格”の違いに、最も顕著に現れるのです。
5.【資産価値】リセールバリューで見る、賢い選択はどっちだ?
- 595 コンペティツィオーネ:量産車としては、驚異的なリセールバリューを誇ります。中古車市場での圧倒的な人気が、その価値を支えています。クルマとして楽しみながら、資産価値も維持したい、という最もバランスの取れた選択です。
- 695 限定モデル:これらは、もはや「資産」です。特に、トリブート・フェラーリやビポストといった伝説的なモデルは、今後も価値が下がることは考えにくく、むしろ上昇していく可能性さえ秘めています。「投資」という側面を重視するなら、こちらが選択肢となります。
6.【最終結論】あなたはどちらの“サソリ”と共に、道を征くか
「595」を選ぶべき、あなた
- ✅ アバルトの持つ、日常の中の“刺激”と“毒”を、毎日味わいたい。
- ✅ パフォーマンスと、購入・維持コストの、最高のバランスを求める。
- ✅ 中古車市場での、豊富な選択肢の中から、自分だけの一台を見つけ出したい。
「695」を選ぶべき、あなた
- ✅ 他の誰とも違う、特別な一台を所有する、という喜びに、最高の価値を感じる。
- ✅ クルマを、「歴史」や「物語」と共に、コレクションしたい。
- ✅ 将来的な資産価値の上昇という、「投資」の側面にも、魅力を感じる。
7. その“部隊章”の価値、モビックが正しく評価します
あなたが所有する、特別な“サソリ”。その価値を、一般的な買取店の査定士が、本当に理解できるでしょうか?
彼らは、あなたの「695 トリブート・フェラーリ」を、ただの「古い、フィアットの小さい車」としか見ないかもしれません。 彼らは、あなたの「595 コンペティツィオーネ」が、なぜ標準モデルよりも何十万円も高く取引されているのか、その理由を知らないかもしれません。
私たちモビックは、単なる査定士ではなく、アバルトというブランドを愛する、熱心なエンスージアストです。695の限定車が持つ、歴史的価値と希少性。595コンペティツィオーネが持つ、市場での絶大な人気。その、それぞれに異なる価値の軸を、私たちは完璧に理解しています。あなたの“サソリ”が持つ、その階級と、誇りを、私たちは、最大限の敬意と、最高の価格でお応えすることをお約束します。
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